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「照義はお土産皆に買ってくの?」
「ええ、浜木夫婦はわざわざ指定してました」
「アハハ」
浜木は図々しく泡盛の銘柄まで指定していた。
夫婦になっても相変わらずで会社では完全に尻に敷かれている。
まぁ、たぶん家でもそう変わらないとは思う。
達樹はそんな会社の皆の分まで買う気なんだろう。
やたらとお菓子を物色していた。
「父さん達のいるとこってこの間のエアメールの住所で変わらないかな」
「そうですね、たぶん」
旦那様達が今何をしているのか詳しくは聞いていない。
達樹もその辺はよくは知らない
けれど、あの方達のことだから、毎日楽しく逞しく過ごしておられるんだろう。
達樹に旦那様はそっくりだから。それに親父がしっかりイソギンチャクのようにおふたりにひっついている。
「じゃあお土産届くよね?」
「食べ物は少し難しいかもしれませんよ?」
「違うよ。これ!」
わくわくした笑顔が目の前にかざしたのは、目が覚めるような黄色の生地に反対色の青で“ちんすこう”と書かれたTシャツだった。
「これならどこに行ってきたのかすぐにわかるでしょ」
「……そうですね」
達樹のセンスは不思議なバランス感覚を持っていて、幼い頃から一流のものばかり目にしてきたせいか、基本的にはセンスがいい。
けれどたまにこういった奇抜なものをチョイスする。
しかも冗談とかで選んでいるわけではないのが面白い。
「これを色違いで六枚♪」
「六枚?」
「うん。父さん達と高ノ宮と高ノ宮のお母さん、それと俺と照義!」
高ノ宮のお母さんとは俺の母親の事で。
達樹は幼い頃からそう呼んでいた。
赤、青、緑、オレンジ、黄色に紫、まるで戦隊物のヒーローのような鮮やかさだ。
それをふたつの家族が色違いで持つことになる。
少し旦那様達が着ている姿を想像すると笑ってしまう。
「それでは私は」
「照義はヒーローカラーの赤ね?」
可愛らしく首を傾けて鏡の前で合わせられた赤いTシャツには,クリスマスカラーのはずなのに、なぜかクリスマスらしい雰囲気が全くない緑でやっぱり“ちんすこう”と書かれていた。
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