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料理の腕は本当に上がっている、なんて俺が言うのすらおかしいくらいに上達していた。
最初の頃は包丁すら握れなくて、何ヶ月か過ぎてやっと野菜の皮むきを出来るようになった頃は毎日切り傷だらけだった。
それがいつからかその傷すらなくなっていた。
その場で一緒に働いていたわけではないから、どんな様子だったかは想像だけれど、達樹のことだから毎日目を輝かせて頑張っていたんだろう。
今日の料理は別に高級フレンチでもなければ、上品な和食でもない。
家庭料理のような温かさのある達樹らしい料理だった。
他の宿泊客がとても美味しいと言って食べる度に、達樹の頬がピンク色なって綻んでいた。
「ぷぷ、驚いたでしょ? さっきの照義の顔、面白かったぁ」
「からかわないでください」
「いいじゃん♪ たまにはさ」
恋愛経験……というか、まぁ恋愛ではないけれど経験だけなら多々ある。
それこそ達樹には言えないし、言う気もない。
どれも気持ちはそこに存在しなかったんだから、本当に無意味で相手には申し訳ない。
でもそんな俺がたじたじになってしまうほど、目の前で楽しそうにはしゃぐ人は天真爛漫に俺を掌で転がす。
「さっきまでは給仕ね?」
「さっきまで?」
「そう! こっからは照義専属の執事! 照義の真似だけどね」
「専属なんですか?」
そう言って、離れに辿り着く小道まではいつもの無邪気な笑顔だった。
部屋に辿り着くなり、きりっとした動作で部屋の中へと案内してくれる。
自分が達樹にこう見えているのかと思うとなんだかこそばゆかった。
「泡盛でも飲まれますか?」
「……私ってそんなにロボットみたいに動いてます?」
「え? ロボットみたい?」
自分の手足を動かしながら確認しているところを見ると、頭の中にある俺の動きと自分の動きが合致していないみたいだった。
何をしても目が離せなくて、つい触れたくて仕方がなくなる。
部屋に辿り着いたら終わりかと思ったのに、達樹の執事ごっこはまだ続いているらしく、市場で買った簡単なつまみを鞄から出そうとすると慌てて駆け寄ってきた。
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