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「き、気を付けるって?」
「変態かもしれないですよ」
「へっ? 変態?」
驚いている達樹に指を伸ばして、目を丸くしているその頬をまたぷにぷにと押してみる。
「執事さん、泡盛おかわり」
「は、はい!」
慌てて空のグラスに注いでくれる達樹の手を取ると、緊張が指から伝わってきた。
「私は達樹が今みたいに真似るほど真面目に執事をやってなかったんです」
「?」
「変態ですから」
本当に変態でまだ幼かった主人には惚れるし、その主人に言えないような学生生活だったし、今だって一生懸命に執事をして俺を労ってくれている達樹に良からぬ事をしようとしてるし。
指を伸ばして引寄せた。
「……ね?」
執事に手を出す主人なんですって教えると顔を赤くした。
「それじゃ、俺と一緒じゃん」
「?」
「だって執事だった照義に手を出したよ? あっ! です」
まだ律儀に敬語を貫こうとする元主人にもう一度唇を重ねる。
今度はやんわりとではなく、しっかりと弄るようなキスだ。
今日だけの専属執事はそのキスにいつもと違って遠慮がちだった。どうしたのかと思って、腕の中にいる達樹を覗き込むと眉をしかめている。
「まずい……泡盛の味がする」
そんなに素直にまずそうな顔をしなくてもいいのに、ちょっと傷付くくらいに舌をベッと出している。
まずいなんて言われたら、今から俺がしようとしている事に差し障るから、その泡盛が消えるようにと、つまみとして達樹がテーブルに置いてくれたチョコレートをひとつ口に含んだ。
「今度はまずくないですか?」
「うん、あ、はい。美味しいです」
甘いチョコ味のキスに頬を染めて敬語で話す達樹に、変なスイッチが入ってしまった。
お互いに覗き込んで微笑み合っているけれど、達樹はその俺の笑顔の裏にある下心まではきっとわかっていない。
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