前回までのあらすじ

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 新興の材木問屋又五郎は昨年起きた江戸大火で屋敷を焼失していた松前潘に取り入り、江戸での勢力拡大を目論んでいた。江戸では大火からの復興のため多くの木材を必要としていた。松前潘次席家老笹島はこれを利用し又五郎と結託して松前潘の屋敷再興を名目に必要な木材を蝦夷の地より大量に調達しようと計画する。料亭での接待を受け上機嫌な笹島に又五郎が松前潘出身だと言う一人の女シヅノを紹介する。長い黒髪と色白な容姿に一目惚れし益々上機嫌になる笹島。その様子を見届けた又五郎は一足先に部屋を後にする。シヅノと二人きりになった笹島が下心を持ってシヅノに接する。その時、シヅノは持参していた熊の毛皮で出来た羽織物を笹島に差し出し袖を通して欲しいとねだると笹島もその申し出を喜んで受ける。毛皮の羽織物を着た笹島に似合いだと褒めさらに上機嫌にさせるシヅノ。ところがシヅノはその毛皮の羽織物に秘められた秘密を笹島に打ち明ける。それを聞いた笹島が戸惑いの表情を浮かべるも既に遅く理性を失い獣火に憑依され豹変してしまう。  その頃又五郎は料亭を後にしようとしていた時、料亭の主人久兵衛に声を掛けられる。又五郎は日頃から世話になっている久兵衛に冬の寒さを凌いで貰おうと持っていた風呂敷包みを手渡す。中には熊の毛皮の羽織物が入っており非常に暖かいので一度袖を通して見るように促す。久兵衛は勧められて毛皮の羽織物に袖を通すとその暖かさをたいそう気に入る。又五郎は久兵衛の喜ぶ姿を見るとほくそ笑みながら店を後にした。
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