第1章 曇天

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予想外に長引いてる入院生活。 友達は多いから面会時間いっぱいひっきりなしに見舞い客が来た… そんな事が続いたのも最初だけ…それから再び顔を出す奴は身内ぐらい。 彼女だったはずの女もSNSのタイムライン上では隣に並ぶ男が俺じゃなくなっただけの話で毎日お盛んな様子。 そんなもんだな… 「くっそ暇だわ…」 何日経っても熱っぽさが引かないダルイ身体を起こし、差し入れてもらったタバコをつかんで自販機でコーヒーを買う… 熱でぼんやりしていて押し間違えたのか…リンゴジュースが出てきて舌打ちしながら買い直し、屋上へ向かった。 ***** そこには… 今にも降り出しそうな曇天の屋上でピエロが一人で泣いていた。 虹色のアフロに風船の様な真っ赤な丸い鼻、大袈裟な蝶ネクタイ、ダブダブのパジャマ姿… ピエロは泣きながら白い風船に何かを括りつけると空に放った。 風に流されながら風船は灰の空に白点として昇って行ってあっと言う間に灰の色に溶けていった 「そんな楽しそうな格好で何泣いてんだよ…」 思わず…声を掛けてしまった…
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