第1章 曇天

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首筋に添えられた手が熱を奪わなくなってクロエの手は離れていった。 目を閉じて身体の熱を吐き出すようにゆっくり大きく息をする… 「聖…戻ろう…部屋どこ?」 ダルさで動く気も無くなりかけている俺の腕を掴んで、今さっき知り合ったばかりのこの男は心の底から心配したような顔を向けてくる… だから… 「クロエさ…俺と友達になってよ…」 もう一度大きく息を吸うと熱だけじゃない何かも一緒にゆっくりと吐き出す様に… 「それで…俺が死んだらさっきみたいに泣いて…風船飛ばしてくれる?」 こんな言葉が出てくるのはたぶん熱のせい。 人は病気になると気弱になるって言うから…そのせいだ…自分が死んだ時に泣いてくれる人が欲しいなんて思った。 残った意識の端っこに残ってたのは泣いてるみたいなクロエの顔だった。
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