第1章 曇天

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どうやって部屋に戻ったか全く覚えていないわけじゃない… 意識はほんの少し向こうと薄く繋がって、レースのカーテン越しに見るTVの様に残っている… 呼吸の度に唸り声を上げる程に発熱し、傍にいたクロエにしがみついていた。 確か背負われてここまで戻って来た… 何も言わなかったのに何で部屋が分かったのか…クロエは迷わずこのフロアまで来てすぐに看護師を呼んだっけ… 自分の熱を確かめるため額に手を当て見上げた手首に巻き付いた入院患者のタグで納得した。 一通り記憶のおさらいが終わると意識が少し広がって部屋の中を見渡す。 自分が寝ているベッドの足元に、パイプ椅子に仰け反って顔に本を被せて眠っているクロエに気付くと再び記憶を巻き戻した… あの時言ってしまった言葉にうっかり赤面してしまう。 小学生じゃあるまいし… ベッドテーブルに置かれたペットボトルのミネラルウォーターは汗をかいてテーブルに大きな水溜りを作っていた。
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