たった二文字の勇気

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本当は分かっている。 みっともないのは私の方だ。 一生懸命、時間をかけて重ねたいくつもの言葉は 『好き』というたった二文字の言葉に、いともたやすく掻き消されてしまった。 伝えなければいけない言葉を伝えず、私は何を伝えて来たのだろう。 『好き』の二文字が言えなくて、違う色を混ぜて薄めてごまかして。 薄いピンクをどれだけ塗り重ねても、真っ赤な色に染まる事はない。 仲の良い友達にはなれても、恋人にはなれないのだ。 重ねてなんかいなかった。 臆病な自分を守る為の衣を、重ね着していただけだった。 どうして私は、たった二文字の勇気を出せなかったのだろう。 彼の隣に居るのは私だったかもしれないのに… もう誰も好きになる事は出来ないかもしれないけれど もしまた誰かを好きになれたなら、もう言葉や笑顔を作るのは止めよう。 ありのままの自分の気持ちを伝える為に、たった二文字の勇気を作ろう。 たった二文字の勇気だけで、世界が変わるかもしれないのだから。
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