【1】ミナミ 私の場合 1

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私は堪らず顔を背けていた。 そんな事を言われたら目も合わせられない。 「司が待ってるからもう行かなきゃ…。」 だから離して…。 私は鏡に向けて言っていた。 大きな鏡に映る等身大の二人。 これが今の私たちの姿。 二人とも歪んでいる。 「なあ本気? 本気で言ってんの?」 「本気よ。」 そうじゃなかったら今の私は何なの? キリリと手首が軋む。 鈴が容赦なく力を入れる。 私の大事な手が…。 「ヴァイオリン…、まだやってんだろ?」 私は涙目になりながら鈴を睨み付けた。 「ハハ、嘘々。 知ってるよ、プロになったんだもんな。」 「離して…、」 「いいよ。」 「……。」 「その代わり一回やらせてよ。 昔のよしみでさ。 あ、違うか、それを言うなら姉弟のよしみでか。」 .
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