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先ほどまでの会話の内容はともかく、街灯に晒されたこの二人はいたって一般的な少年少女に見えるはずだ。上からの指示で、物騒な恰好は控えている。
しかし、俺・緑川信雄は、どこにでもいるような普通の高校生――ではない。まあ元々こんなことになる前から、少なくとも自分自身ではそう思っていたのだが。十七歳の今でも、俺はこの程度じゃない、だとか、本当はもっとできる人間なんだ、なんて中学生のように夢想しながらではあるものの、大多数の高校生と同じように、繰り返される日常が脅かされることなど憂いもせずに、今日も夕暮れに染められた道を歩いているはずだった。
「キョロキョロしすぎて怪しい。多聞さんがいないからってビビってるの?」
十分に美少女の範疇へ含まれるが少しキツめの顔つきを、より険しくして彼女は言う。
「いや、なんつーかさ……こんな形とはいえ、いちお女の子?と二人きりで郊外へ出かけてるわけだし」
「デート気分とか、浮かれるのも大概にしなさい。てか今女の子、で語尾を上げたよね。疑問いだく余地ある?」
「女の子扱いされたいんだかされたくないんだか――――」
「……信雄、分かってるとは思うけど」
三条の声に、少し緊張が混じった。
「公私混同はしない、だろ? まあデートはプライベートで好きなだけどうぞ。もっとマシな男とね」
ダサくて気に入ってない名前を呼ばれ、声色を少し暗くして答える。
「そうじゃなくて――いや、それもそうなんだけど」
「……ああ。相変わらず鼻につく気配(におい)だ」
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