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それまで途中経過を何度も目にしたにも関わらず、僕はまた新たな衝撃を受けた。
いいや、これは女子高生らしい、フレッシュな感性じゃない。
どこか不穏な予感を引き起こす絵だ。
智香の絵を目にするたびに、賞賛すべき九十九パーセントよりも、否定すべき一パーセントを他人に触れ回って同意を得たくなる。
むろん、そんなことをしても負け惜しみになるだけだから、実行したことはない。
ただ、胸中でいつもそんな衝動に駆られるのだ。
蒼白い蛍光灯の下、かっつり結われたポニーテールの黒髪が小刻みに揺れながら、絹じみた艶やかな光を返す。
――あなたに気に入ってもらう必要はありません。
振り返らない黒髪の光も、不吉な画面を完璧に近づけていく絵筆のどこか機械的な動きも、そう告げているかに見えた。
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