第1章

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第1章

 風に合わせて木々が揺れる。  擦れ合う葉や枝が音を立てる。  その音を拾う耳に、異音が混じるように気がした。  声だ。  男か、女か、子供か、老人か。とにかく何かの囁く声が紛れていたように思える。  ふと、視線を動かすと、木々の影に人影が見えたような気がした。  どれも気がした、程度なのに『それ』を想像すると背筋にゾクリとした感覚が走った。  自分は何も見えない、聞こえない。  けれど向こうは  こちらを見て、囁いている。  そんな真実がそこにはあるのではないか。
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