純粋

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「おい暁良~!」 「澤口さんだ、んじゃ、また」 「はい、また今度」 先輩は皆に声を掛け、そして皆に声を掛けられるような人でした。 先輩の先輩には「おい元気にしてたかー?」と声を掛けられ 先輩の同期には「お、今日もお元気そうで」と声を掛け合い 先輩の後輩には「元気にしてたかい?」と声を掛ける 特別何かに秀でている訳ではないけれど、気軽に話ができる。そんな親しみやすさが先輩の素敵だと思うところのひとつでした。もしかしたら、その「親しみやすさ」が先輩の「特別秀でているところ」なのかもしれません。いや、きっとそうなのでしょう。 それでも、暁良先輩の素性は謎でした。私生活が謎に包まれていました。音楽や映画や本の話はたくさんするけれど、その趣味の話をしている時の顔とボランティアに参加している時の顔しか私は知りませんでした。TwitterやFacebookなどのSNSが盛んで、会ってなくてもその人が何をしていて何を考えているか分かるような現代なのに、先輩のことは分かりませんでした。 それが逆に、私を切なくさせる要因でもあったのです。 「海未ーっ!」 「わわ、伶香ちゃん」 伶香ちゃんは私と同い年、同期の女の子です。伶香ちゃんも私と違う大学に通っていましたが、暁良先輩と同じように大学生のボランティアサークルがきっかけで仲良くなりました。伶香ちゃんは暁良先輩と同じ大学に通っているので、サークル活動以外でも学校内で暁良先輩とすれ違ったりしていたみたいです。なんだか、いいなあ……と思う私がそこにはいました。
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