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周回ラストの声がかかった。
「踏めや!! 園田!! 踏めェ!!」
熱風の中を走ることよりも、原付でおれの斜め後ろを走る安井の気配と怒鳴り声が気に障る。
あと三……二……、一……。
白線を踏み越えてから、ため息と一緒に体の力を抜いた。
……思ってたより、調子悪ィ……。
「んー……、今日のあんた、イマイチね」
喉を鳴らしてスポドリを飲みながら、記録係をしていた美桜の冴えないコメントを聞き流す。
クッソ暑い日だった。
競技場の周りを飾ってるつもりのプランターの中でくたっと萎れてる、あの植物の気持ちがわかる。
気のせいか、頭から首筋までズキズキするし。
333.3メートルを三周回って競うおれの闘いは、長いようで短い間に決着がつく。
イマイチなのはおれが一番わかってる――背を反らして大きく息を吐いた時、
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