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「最悪だな。やる気あるんか、お前」
やって来てすぐにタイムをチェックする安井から、キツい一言を浴びせられた。
二ヶ月前に来たばかりのくせに、やたら態度のでかいコーチ、安井道隆三十歳。
実業団チームにいた実績を買われて学校に呼ばれて来たらしいけど、こいつの指導は聞く気になれない。
はっきり言えば、こいつが嫌いだから。
「大会は来週だぞ。お前がこんなんでインターハイなんか行けるか」
安井の言ってることは正しい。
だからおれは倍悔しくなって、そっと奥歯を噛み締める。
少し黙っておれを見つめていたあいつは後ろに振り向くと、
「相模原」
「はい」
「県大会はお前がエースだ。気合い入れとけよ」
「!」
急にそう言われた啓介は、驚いた顔で安井、おれを見る。
「――でもコーチ、直樹は」
「こいつの脚が当日もこれじゃ話にならん。……じゃあ」
安井はおれを見てにやりと笑い、
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