head wind(向かい風)

5/8
前へ
/8ページ
次へ
「多分、ぼくらのコンディションと仕掛けかたを見るんだろうね」 「あの腐れドS、マジ性格出てんな」  啓介は淡々としている。一方のおれは愚痴が止まらない。 「気のせいかな、寒気までするしよ」 「――え」 「とにかく、レギュラーは獲りにいく」  おれはバイクに跨がってコースに出た。  安井の嫌がらせには、絶対負けねえ。  ……この時頭がやけに熱かったのは、きっとやつに対する感情が高ぶっていたせいだと思っていた。  西荻宮高自転車競技部は一年が四名、二年が四名、そして引退間際のおれたち三年は、三名。  三年以外でレギュラーになれそうなのは二年の筧、あとは藤枝……一年はまだまだだ。  二年メインで組むべき頃だってのはわかってるけど、まだおれたちが引っ張っていかなきゃいけないって気持ちは強い。  ……自分に正直になって言えば、レギュラーを譲るのは早いって思ってる。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加