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「それで、もしやと思って屋上に行ってみたら、晶子さんと朋美さんがお弁当を食べていたでしょう。それで、写真を撮ったじゃない」
秀太が真顔で言うのを聞いて、晶子と朋美は急いでお弁当を仕舞った。秀太は何やら不穏な空気を感じ取った。
「どうしたの?二人とも。僕は何か変なこと言ったのかな・・・」
秀太の言葉を朋美が遮った。
「変なことばっかりよ。まず、わたしたちは昨日の十二時四十分どころか、一時のチャイムが鳴るまで生徒会室にいたわ。次に、昨日は、わたしたちはお弁当を生徒会室で食べたわ。最後に、秀太さんの言ったことは昨日じゃなくて、その前の日のことよ」
「えーっつ。どういうこと?」
「どういうことって、知らないわよ。良いこと?わたしたちは約束をすっぽかされたから秀太さんのこと、怒ってるの。わたしたちそれを昨日の放課後、伝えようと思っていたのに、秀太さん、サッサと教室からいなくなったじゃない」
朋美の剣幕にたじろぎながら、秀太は晶子を見た。
「わたし、秀太さんが嘘をついてるとは思わないけど。朋美がいま言った通りよ。秀太さん、よく考えてみて。昨日、何かおかしなことなかった?」
晶子は立ち上がって、秀太の眼を直視した。秀太は澄んだ綺麗な瞳をしていた。
「うーむ。おかしなことか。昨日、変わった事といえば、部室のいつもは使ってない非常口を通ったことぐらいかな」
秀太は独り言のように呟いて、考え込んだ。
「そう言えば、秀太さんは一昨日ここに来るときに、非常階段を使って来たと言ってたわね。その非常階段って三階と屋上から一階に出るやつでしょ?」
「そう。昔はその階段を二階の生徒も使ってたらしいけど、今はうちの部室ができたから反対側に移ったんだ」
「でも、その非常口はそのまま写真部の部室に残されてるのね」
「そう。いつもは施錠されてるんだけどね。でも、昨日はたまたま開いてて、僕は急いでたからその非常口を使ったというわけさ」
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