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「そのカギは誰が開けたのか知ってる?」
「うん、部長の永井修が開けたらしい。昨日、ここから非常階段を使って部室に戻ったでしょう。その時、その二階の非常口のところで、ばったり、修と鉢合わせしたんだ」
「そう、でもそれって、一昨日のことよ。ところで、永井修ってあの実力テストで満点取り続けてるひとでしょ?」
「そうだよ。あいつ、いつも忙しそうにしてるのに、実力はあるみたいだ」
「それで、その時、何か変わった事はなかったの?」
朋美も立ち上がって、秀太に訊いた。
「うーん。だから、非常階段を使ったということと、修に出くわしたということと、そして・・・。いや、待てよ。そう言われてみれば、もう一つあったな」
秀太が、ポンと手を打って晶子と朋美の顔を見た。
「何があったの?」
晶子と朋美が同時に、訊いた。
「時計だよ。部室のキャビネの上に置いてある置時計。僕が部屋を出たのが十二時四十分だったって、言ったろ。ところが、僕が非常口から部屋に入って見た時もその時計、同じ十二時四十分を指してたんだ」
「なんだ。それって、時計が止まっていたんでしょ。壊れてたらそんなことあるわよ」
「そうだったのかな。そうだよね、晶子さん。君たちの写真を撮ったりしてたから、十分以上は経ってるはずだったからね」
そう言って、秀太は笑った。晶子と朋美は最後まで、昨日と一昨日を混同している秀太が信じられなかった。
晶子が帰宅すると、居間に南雲太郎がいた。帰宅が遅いか帰らないかで、晶子が南雲を見かけるのは久しぶりだった。
「あっつ。おじさん。今日は早いのね」
時刻は午後六時過ぎだった。
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