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翌朝、教室の席について晶子と朋美が談笑していると、秀太がやって来た。
「どうしたの?秀太さん。また、写真のこと?」
晶子が声を掛けた。だが、秀太は思い詰めたような表情だった。
「俺、何か大変なことを発見したみたいなんだ」
そう言って、辺りを見回した。クラスの他の生徒たちは授業開始の前だったので、自分たちの話題にそれぞれ花を咲かせて、晶子たちには無関心のようだった。
「なんなの、大発見って」
好奇心旺盛な朋美が嬉しそうな顔をした。
「うん。その前にこの写真を見てよ」
秀太は高価そうなデジタルカメラを晶子の机に置いた。
「どうやって見るの?」
「僕が操作するから、二人はこのカメラの後ろの液晶画面を見ててよ」
秀太は中腰になって、デジカメのボタン操作をした。すると、液晶画面に撮影された写真が表れた。
「これは、わたしたちを屋上で撮ってくれたやつね」
晶子が液晶画面を覗き込みながら言った。
「そう。大事なのはその右隅に出ている日付と時刻なんだ」
「ああ、これね」
晶子は秀太の指差す場所を見た。それは、三日前の日付と時刻だった。
「これがどうかしたの?」
一緒に覗き込んでいた朋美が疑問を呈した。
「だから、君たちの言ってたことが正しかったということなんだ」
「なんだ、やっと分かってくれたのね」
晶子が喜んだ。
「でもどうして、こんなことで確認しなければ秀太さんは間違いに気づかなかったわけ?」
朋美が訊いた。
「これは、間違いなんかじゃないんだ」
「どういうこと?」
晶子と朋美が同時に訊いた。
「僕はそのぉ・・・。部室の非常口を出た時に、一日前の日に戻ってしまったということなんだ。つまり、タイムスリップが起きたんだ」
「タイムスリップ?!」
晶子と朋美は信じられないという顔をして、秀太を見た。
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