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秀太の言う「タイムスリップ」に、晶子はとても信じられないと思ったが、朋美は興味を持った。
「面白いじゃない。わたしたちで確かめてみましょうよ」
「どうやって?」
晶子が訊いた。
「わたしたちも、その非常口を通ってみるのよ。本当に、一日前に戻れるのかどうか」
「でも、その非常口はいつも施錠されてるんじゃない?」
「鍵は永井修が持ってるんだ。あいつ、時々それで非常口を開けてるみたいなんだ」
「それで、もし、その非常口を使って一日前に戻ったとしたら、どうなるの?わたしたち」
晶子が訊いた。秀太はその辺の知識に詳しいようだった。
「例えば、過去の自分に出くわすだろうね。僕の場合はたまたま、晶子さんたちを探していたから、そうならなかったけど」
「でも、この写真を撮ったのは未来から来た秀太さんだったということよね。そして、その写真がいまここにあるってことは、どういうこと?」
「未来から来た人間が自分の未来を変えることができるということになるね」
「そうか。もし、未来から来た秀太さんがこれを撮らなかったら、いまこの写真はないはずだものね」
「じゃあ、未来はいくらでも書き換えられるってこと?」
朋美が訊いた。
「うん、パラレルワールドというやつだね。未来は幾つもの集まりで、そのどれに行くかは自分次第ということじゃないのかな」
「でも、もし昨日に戻れるとしたら、今日の様子は少し変わってしまうということなの?」
「そうだね。タイムスリップ自体があり得ないことだから、そんなこと普通じゃ考えられないけど。本当に一日前に戻れたとしたら、僕だったらその日に失敗したことをやり直そうとするかもね」
「例えば、どんなこと?」
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