1人が本棚に入れています
本棚に追加
「この前の実力テストなんか、僕の失敗作だから。本当ならば、その日に戻って試験をやり直したいね」
そう言って、秀太は笑った。だが、朋美はそれをまともに受け取った。
「それって、ズルよね。自分だけ試験をやり直すわけでしょう」
「ハハハ、例えばの話さ。マジに取らないでよ」
秀太は朋美の怖い目つきに少し引いた。
「でも、待って。秀太さんはさっき、永井修がその非常口の鍵を持っていて、時々、その非常口を使ってるようだと、言ったわよね」
晶子が訊いた。秀太が頷いた。
「もし、その非常口が昨日に戻れるタイムスリップのゲートだとしたら、永井修は何のために、その非常口を使ってるのかしら?」
晶子の疑問に、秀太が閃いた。
「まさか、あいつ、本当に試験のやり直しをしてたのか?」
「あり得るわ。だって、最近の実力テストの結果は、いつも永井修が満点でダントツ一位だもの」
朋美が唸るように言った。晶子と秀太は朋美が完全に怒っていると思って、焦った。
取りあえず三人は放課後、写真部の部室を調べることにした。
そして、その放課後。校舎二階奥の写真部のドアを開けると、部室には誰もいなかった。
「今日は部活の無い日だから、調べるのに好都合だよ」
そう言いながら、秀太が晶子と朋美を部屋に招き入れた。晶子たちはまだ二年生の時、卒業式の送辞を纏めるために資料集めの一環として、この写真部の部室を一度訪れたことがあった。以前来た時と同様に、部屋の中央に大きな作業机があり、壁側にはアルバムやファイルの保管されたキャビネットが並んでいた。
「それで、その使われてない非常口はどこにあるの?」
朋美が訊いた。
「うん。それは、このキャビネの列の一番端にあるよ」
そう言って、秀太は部屋の奥に歩いて行った。晶子と朋美があとをついて行くと、キャビネの途切れた壁側に赤い塗装が剥げ落ちた古いドアがあった。
最初のコメントを投稿しよう!