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晶子がそう思った時、剣道場の出入り口から白色の人影が現れるのを見た。それは、一人ではなかった。晶子は咄嗟に、木立の影に隠れた。
「出たな、生霊族!」
静寂を破るように鋭い声がした。
「誰だ?!」
がっしりした体躯の生霊族の若者が辺りを見回しながら、叫んだ。剣道場の前には三人の生霊族がいた。
晶子は剣道場の屋根の上に黒い人影を見た。
「お前たちの天敵の椿忍者だ!」
そう叫ぶと、黒い人影は大跳躍して剣道場の傍の木立に取りついた。
「おのれ、こんなところに椿忍者だと?面白い、ここに降りてきて、俺たちと勝負しろ」
がっしりした体躯の生霊族の若者が木立の上の黒い人影に向かって叫んだ。
その男は、もう一人の中肉中背の若者と同様に奇妙な出で立ちをしていた。晶子は北海道の精霊の里で見たキリコの出で立ちに酷似していると思った。ただ、三人目の生霊族は普通のシャツとズボンの若い男だった。
(あれは、魔一族?それに、木立の上の黒い人影は椿くん!)
晶子がそう思った時、木立の上の黒い人影は棒状の手裏剣を矢継ぎ早に投げた。晶子が驚いたことに、その生霊族の男は両腕に仕込んだ刀を逆手に抜いた次の瞬間、向かって飛んで来る棒状手裏剣を瞬く間にすべて叩き落とし、そのまま刀を元の腕の鞘に納めた。
(キリコと同じ技だわ。両腕の仕込み刀も同じ!しかも、忍者のような装束?)
晶子は木立の影から、俊介をハラハラしながら見ていた。
「椿忍者を甘く見るなよ」
俊介はそう叫ぶと、木立の上からスルスルと滑るようにして地上に降り立った。そして、斜に背負った刀をスラリと引き抜くと、戦闘体制になった。
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