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「フフフ。いい度胸だ、椿忍者。こんなところで、戦えるとは思っても見なかった。お前の名は何という?」
がっしりした体躯の若者が叫んだ。
「俺は、椿俊介だ。お前は?」
「わしか?わしはサスケだ。そして、こいつはわしの弟分のオロチだ。わしらの飛竜剣から逃れられるかな?」
サスケは、背後の中肉中背の若者をオロチと紹介すると、俊介にジリジリと詰め寄った。俊介は生霊族の魔一族が使うという「飛竜剣」を聞き知っていたが、先ほど木立の上から投じた棒状手裏剣がことごとく叩き落とされた早業を見たのは初めてだった。
「お前の両腕にある仕込み刀が飛竜剣なのか?」
俊介が訊いた。
「ふん。今に分かる」
そう言った後、サスケは右前方に小さく飛んだ。そして、次に左前方へはねたと見えた瞬間、俊介の頭上高く飛び上がり両腕の仕込み刀を抜きはらった。
俊介は咄嗟に後方へバク転すると同時に、棒状手裏剣をサスケに投げつけた。サスケは逆手に握った刀で手裏剣を叩き落としながら、俊介に切りかかった。紙一重で、その刃を交わした俊介だったが、木立を背に追い詰められてしまった。
「フフフ。よくわしの一撃を交わしたな。だが、もう逃げられんぞ」
そう言って、サスケは再び三角跳びの間合いを取った。その時、どこからともなく飛んできた石つぶてがサスケの右手を襲った。
「うっつ。何者だ!」
サスケは石つぶてを受けた右手を抑えて、振り返った。その時、夕日が終わりすっかり暗くなった木立の闇の中から現れたのは紅い生霊だった。
「わたしは紅い生霊だ。お前たち、どこから現れた?」
ファントムと変声マスクを着けた紅い生霊は男のような声だった。
「紅い生霊だと?大層な恰好をしているが、貴様はわしらが見えるようだな。お前も椿忍者の片割れか?」
「わたしの詮索は無用だ。それよりもお前たち、なぜこんなところにいる?」
「わしらは、メルサの頼みで晶子という小娘を探しているのだ。お前、知らないか?」
「晶子を探し出して、お前たち、どうするつもりだ」
「ふん。メルサはわしらに晶子を殺せと言っている。わしらが世話になっているその代償というわけだ」
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