1人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうか。わたしはその晶子の守り神だ。お前たち、わたしを倒さねば晶子の命を奪うことはできないぞ」
「なるほど、そう言うことか。面白い。おい、オロチ。わしらの相手はこの紅い生霊という男だ。ぬかるなよ」
サスケの檄に、オロチも身構えた。
紅い生霊は二人の異様な生霊族のことをもっと知りたかったが、戦うしかほかにないと思った。そして、紅い生霊のマントの下で晶子はアサカに変身した。忽ち、紅い生霊の両手からビームソードが現れた。それを見て、サスケはたじろいだ。
「ム、なんと。無刀の剣。お前は真の秘剣が使えるのか?」
「お前たち、真の秘剣を知っているのか?」
「まさか。真の秘剣は生霊族の選ばれし者だけが使える究極の殺人剣だ。お前ごときが使える筈もない」
サスケの代わりに、オロチが叫んだ。
「待て、オロチ。ここは一旦、退却した方が良い」
サスケがオロチを制しようとした。だが、戦闘モードに入っているオロチを止めることはできなかった。
「これでも喰らえ!」
そう叫ぶと、オロチは三角跳びの後、紅い生霊の頭上に大跳躍して飛竜剣で襲い掛かった。
だが、超人的な動態視力の持ち主の晶子はオロチの動きをすべて見切っていた。紅い生霊は正眼の構えから、オロチの胸元にビームソードを突き刺した。
「ギャーッ」
オロチが断末魔の悲鳴を挙げた。
次の瞬間、驚くべきことが起こった。オロチの身体が空中で水蒸気のように蒸発して消えてしまったのだ。ビームソードの威力に、サスケたち生霊族は怯んだ。
「くそ、無刀の剣恐るべし。オロチがやられた。おい、引き上げるぞ」
サスケがそう叫ぶと、もう一人の若い生霊族は頷き、二人して裏門の方へ駆けて行った。
紅い生霊は、木立を背に立ちつくす俊介に歩み寄った。
「椿くん、大丈夫。どこかやられたの?」
俊介は左手で右腕を掴んでいた。その右腕の先から血が滴り落ちているのを紅い生霊は見た。
「腕を怪我したのね。道場の中に行って手当てしましょ」
俊介は無言で頷いた。
紅い生霊の衣装を取り去った晶子は剣道場の奥に行き、マネージャー室のドアを開けた。幸い、ドアに鍵は掛かっていなかった。部屋には救急箱があった。晶子はそれを持って、道場の板張りの上に胡坐を掻いて座っている俊介の傍へ歩み寄り、跪いた。
最初のコメントを投稿しよう!