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校庭にイチョウの黄色い葉が降り積もる季節になった。屋上の陽だまりの中で、晶子と朋美は並んでお弁当を食べていた。
「もうすぐ秋も終わるわね。高校生活最後の晩秋だと思うと、余計に寂しいわ」
朋美が柄にもなくおセンチになっていた。
「そうね。プロムの学校行事化も決まったし、後は卒業式を待つだけかしらね」
晶子も大事業を成し遂げた後のような虚無感に襲われていた。
「でも、その前に受験があるわ」
「そう言えば、今日午前にやった数学の実力テストはどうだったの?先月の実力テストは三科目総合点の上位者がさっき掲示板に張り出されていたわね。朋美は十位じゃなかった?」
「今朝の数学はまあまね。みんな一生懸命だから、ちょっと油断するとすぐに順位が落ちるのよね。晶子はいつも総合点で五位以上だから安定してて羨ましいわ」
「わたしはがり勉じゃないけどね」
「分かってる。晶子は、定期テストより実力テストの方が成績良いもの」
「なに、それ。誉めてるの?」
「誉めてるのよ。だから、羨ましいって言ったでしょう。だけど、最近秀太さんを抑えて、トップを維持している永井修って、誰か知ってる?」
「たまたま掲示板を一緒に見てた秀太さんに訊いたら、彼と同じ写真部で部長さんをやってる人らしいわよ」
「それも、総合でいつも満点だから断トツだものね。よっぽど猛勉強してるんだわ」
そう言って、朋美が笑った。
その時、話題の有村秀太がやって来た。
「やあ。君たち、ここにいたんだ」
秀太は首からカメラバッグを提げていた。
「どうしたの?秀太さん。わたしたちを探してたの?」
「あれ、晶子さん。僕、話してなかったかなあ。卒業アルバム用の写真を撮るって」
「ふうん、そうだったかしら。もうそんな時期なのね」
「今週は、生徒会関連の写真を少しずつ撮りたいんだけど。まず、晶子さんと朋美さんを撮らせて欲しいんだ」
「秀太さんもいろいろ忙しいのね。野球部の方はどうしてるの?」
朋美が訊いた。
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