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「ああ、監督クンの操作のことだね。あれは野球部が新体制になったので、二年生の金子光夫君と鈴木豊君に引き継いでもらった。二人は情報分析チーム員として、甲子園で活躍してもらったんだ。それで、僕は野球部の兼任を解いてもらって、いまは写真部に専念してるというわけさ」
そう言って、秀太は笑った。それから、秀太はバッグから取り出したカメラで晶子と朋美を撮影した。
「晶子さん。今度は生徒会室で、生徒会役員の仕事ぶりを撮影したいので、また、連絡します」
そう言って、秀太は戻って行った。
その日の放課後、晶子と朋美が帰り支度をしていると、秀太がやって来た。
「晶子さん。明日のお昼休みに生徒会室で写真を撮りたいんだけど、大丈夫かな?」
「ああ、卒業アルバムのことね。分かったわ。でも、もう一樹さんたちに連絡が取れないから、わたしと朋美だけよ。それでも良いなら」
「急なことでごめん。生徒会役員の全体写真はまた今度お願いするから。じゃあ、明日のお昼休み、生徒会室で」
そう言って、秀太はそそくさと教室を出て行った。
「卒業アルバムの担当って大変そうね」
朋美が言った。
「でも、なぜわたしたちのだけ二回も写真を撮りたいのかしら」
「まさか、別冊の写真集を作ってくれるとか?」
「わたしたちの?ありえなーい」
晶子が笑った。
「それはさておき、来月はクリスマスよ。その相談でもしない?」
「今から?」
「そうよ。去年は結局、晶子は桜田先生にプレゼントをしなかったでしょう。今年は早目の準備をしておくべきよ」
「それって、どういうこと?」
「ほら、手作りのプレゼントとか。いろいろあるでしょう」
「分かった。その相談ね。じゃあ、ちょっと寄り道して帰りましょ」
晶子と朋美が商店街のいつもの喫茶店に入った時、晶子は微かな悪寒を感じた。
「朋美、今日はここから独りで帰って」
「どうしたの、急に?」
「何か分からないけど、危険が迫ってる気がするの。お願いだから、ここから真っ直ぐ帰って」
「晶子はどうするの?」
「わたしは、それが何なのか、確かめるわ」
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