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「それって、今までと同じじゃない。わたしを生かしてはおけないということでしょ」
そう言いながら、晶子は戦慄を覚えた。
「そうだ。だが、今日お前に言いたかったのは、俺たちは本気になったということだ」
「宣戦布告と言うわけね」
「だが、今すぐにお前や紅い生霊を襲撃するわけではない。大きな代償を払って俺たちも学んだからな。お前たちの弱点を見つけ出し、俺たちの体制も整えて、再び、会いまみえることになるだろう。俺たちは必ず決着をつける。それをお前に伝えて置く」
そう言い終わると、メルサは伝票を掴んで立ち上がった。晶子も素早く席を立つと、身構えた。
「ちょっと、待ちなさいよ」
「何だ?」
「一つ、聞いておきたいことがあるの」
「言ってみろ」
「オスロとカシムはお気の毒だったけど、わたしカシムの最後を見たわ。あの時、不可視光線の発光が止まって、普通の人間になってた。生霊族の人たちはみんな、死ぬとそうなるの?」
「そうだ。俺たち、生霊族は母親から受け継いだ特殊なミトコンドリアを持っている。そいつが不可視光線を出して、普通の人間には見ることができない透明人間にしているのだ。だが、死んでしまえばその発光は止まり、見た目は普通の人間のようになる」
「見た目はということは、良く調べれば生霊族と普通の人間との違いが分かるということなのね」
「俺も詳しいことは知らないが、ミトコンドリアやDNAを調べれば違いがはっきりするだろう」
「カシムの死体は大阪の警察が引き取ったから。きっと、その後に死体を調べられたはずよ」
「フフフ。生霊族の存在を警察に通報したお前が、何を心配している」
「わたしも半分は生霊族だから、自分を調べられているようで嫌な気がするだけよ」
「それは安心しろ。カシムの遺体はオスロと俺が警察の遺体保管所から盗み出した。そして仲間に引き渡した。その後、オスロもトレーラーの爆発炎上で遺体は炭化しただろう」
「そうだったの」
晶子はそれ以上、何も言えなかった。
「また、会おう」
そう言い残して、メルサは立ち去った。
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