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三階の扉を開けて校舎の中に入ると、左手に生徒会室の入口が見えた。秀太は急いで、生徒会室の前に行きドアをノックした。だが、中から返事はなくドアはロックされていた。
(晶子さんたち、もう、あきれて帰っちゃったのかな)
その時秀太は、晶子と朋美はよく屋上でお弁当を食べているという伊藤良平の話を思い出した。そして、取りあえず屋上に行ってみることにした。秀太がいま来た非常階段を使って屋上に出ると、案の定、晶子と朋美はお弁当を仕舞っている最中だった。
「やあ。君たち、ここにいたんだ」
「どうしたの?秀太さん。わたしたちを探してたの?」
「あれ、晶子さん。僕、話してなかったかなあ。卒業アルバム用の写真を撮るって」
「ふうん、そうだったかしら。もうそんな時期なのね」
「今週は、生徒会関連の写真を少しずつ撮りたいんだけど。まず、晶子さんと朋美さんを撮らせて欲しいんだ」
「秀太さんもいろいろ忙しいのね。野球部の方はどうしてるの?」
朋美が訊いた。
「ああ、監督クンの操作のことだね。あれは野球部が新体制になったので、二年生の金子光夫君と鈴木豊君に引き継いでもらった。二人は情報分析チーム員として、甲子園で活躍してもらったんだ。それで、僕は野球部の兼任は解いてもらって、いまは写真部に専念してるというわけさ」
そう言って、秀太は笑った。それから、秀太はカメラで晶子と朋美を撮影した。
「晶子さん。今度は生徒会室で、生徒会役員の仕事ぶりを撮影したいので、また、連絡します」
そう言って、秀太は再び屋上から非常階段を使って写真部の部室に急いだ。階段を降りて踊り場になっている二階の非常出入り口のところで、秀太は驚いて立ち止まった。そこには部長の永井修がいたからだ。
「あれ、修。どうしてここに?」
「秀太、お、お前こそ。どこに行ってたんだ?」
なぜか修は動揺しているように、秀太には感じられた。
「今日は生徒会の写真を撮ることになっていたんだけど、約束の時間にチョット遅れてしまって。そしたら、偶然この非常ドアが開いてたからこの階段を使って上に行ってたんだ」
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