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「そ、そうか」
「ところで、修。いつも施錠されてるこの非常ドアが開いていたけど、お前が開けたんだな?」
「ああ、そうだ。俺が開けた。まあ、忙しいこの時期は仕方ないさ」
そう言いながら、修は非常ドアのノブを回した。そして、二人は写真部の部室に入った。秀太は何気に、置時計を見上げた。それは十二時四十分を指していた。
「あれ、変だな。さっきこのドアを出る時も同じ時刻だったような気がするんだが」
その言葉に、修が再び動揺した。
「な、何、言ってるんだ。お前、夢でも見たんだろう」
そう言って、修は高笑いした。
その日の放課後、晶子は帰り支度をしていた。
「ねえ、昨日の相談を今日やらない?」
「クリスマスプレゼントのこと?」
「そうよ。準備は早目が大切だからね」
「分かった。その前に、チョット秀太さんに文句言っとかないと」
そう言って、晶子は教室を見渡した。だが、秀太の姿はすでに見えなかった。
「なんだ。秀太さん、いないわね」
「良いじゃない。それは明日でも」
「そうね。仕方ないわ」
晶子と朋美はそれから、校舎を出た。商店街に向かう途中、土手道に差し掛かった。
「ところで、晶子。昨日の喫茶店では何かあったの?」
「メルサがいたわ」
「あの生霊族の?」
「そう。メルサはわたしに宣戦布告をしてきたわ」
「宣戦布告?」
「二人の仲間を死なせたので、わたしと紅い生霊に報復すると言ったの」
「そんなの自業自得じゃない。逆恨みも良いところだわ」
「メルサは犯罪グループの組織から責任を問われてるらしいの。だから、今回は本気よ。朋美も気をつけて。メルサが言ってたけど、わたしは生霊族の仲間から監視されてるらしいの。いまは辺りにいないと思うけど、用心に越したことはないわ」
「その話、俺も混ぜてよ」
突然の声に、晶子と朋美は驚いた。
「その声は、椿くん?」
晶子があたりを見まわした。俊介は土手の斜面に寝そべっていた。そして、むくりと起き上がって晶子に微笑み掛けた。
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