第25話 卒業(前編)

9/50
前へ
/50ページ
次へ
「生霊族が晶子先輩を見張っているのなら、俺がその生霊族を見つけ出すよ」 「気持ちは有難いけど、危険よ。相手は銃を持ってるかもしれないから」  晶子は俊介の傍に歩み寄った。俊介は立ち上がって晶子を真っ直ぐに見た。 「俺は、椿忍者の末裔だ。生霊族の悪党を懲らしめるのが俺の使命だから。それを忘れないでくださいよ、晶子先輩」  俊介の強い押しに、晶子は呆れた。 「分かったわ。一緒に戦いましょう」  翌日のお昼休み、晶子と朋美は屋上でお弁当を食べていた。 「一昨日あった数学の実力テストの結果見た?」  朋美が話題を提供した。 「うん。また、永井修が一位だったわ。秀太さんは二位だったしね」 「でも、いつも満点っておかしくない?」 「そう言えば、以前もこんなことあったわね」 「二宮祐二よ。全国模試で満点取ってたわ。メルサを使ったカンニングで」 「でも、永井修がメルサと関係あるとは思えないわ。それに、二宮祐二の時は取り巻き四人組が協力してたし。永井修にそんな力はないでしょ」 「じゃあ、実力なのかしらね」  そこへ、秀太がやって来た。 「やあ。いた、いた」 「なによ。いた、いたって。蝉かカブトムシを見つけたみたいに」  朋美が口を尖らせた。 「わたしも、秀太さんには、同じことを言いたいわ」  晶子も攻撃的だった。 「どうしたの?二人とも。今日は怖いね」  秀太が引いた。 「そりゃあ、そうよ。昨日のお昼休み、わたしと朋美は生徒会室で秀太さんのことずっと待ってたのよ」  晶子の非難に、秀太は頭を掻いた。 「ああ、ごめん。そのこと?実は、部室で写真の整理をしてたら遅くなっちゃって。慌てて生徒会室に行ったら君たち、もういなかったんだよね」 「それ、何時ごろのこと?」 「えーと。部室の時計が確か、十二時四十分を指してたよ。それで、あわてて、非常階段を使って三階の生徒会室に行ったんだけど。でも、もうドアはロックされてたんだ」  秀太の言葉に、晶子と朋美は顔を見合わせた。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加