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父は手や足の怪我で何度か入院しているが、『帰る!!』なんて言い出したのは今回が初めてだった。
手や足の怪我は死には至らないし、治る。だが癌だと言い知れぬ何かがあるのかもしれない。
もしかしたら父はそんなに長く生きれないかもしれない。多少長く生きれたとしても癌や合併症で死ぬ可能性の方が高い。このワガママを聞かなければ父が旅立った時に必ず家族全員が後悔すると思ったのだ。
『検査入院の時帰りたいって言ってた時に聞いてあげれば良かった』
人が死んだ時、残された者は必ず何かしら後悔する。心残りがある。
『あの時ああしてあげれば良かった』
が、山のように出てくる。
それを1つでも減らしたかった。
出来る事なら『あの時聞いといて良かったね』
に、したかった。
もし5年経ち、10年ぐらい生きれたとしたら、それはそれでいいわけだし。苦労させられたわ~!で済む話になる。
家族も大変な思いをするが、本人が一番大変な筈だ。検査、治療、手術、全てに不安や恐怖もある。『死』の文字がチラつく。1人ぼっちで暇だと考える時間も増え、プラスに考えていてもマイナスが強くなったりもする。病に立ち向かい治療するのは本人だ。少しぐらいのワガママを聞かなくてどうする?『もう入院も検査も嫌だ!帰る!』と言ってるわけではない。『検査の無い3日間だけ帰りたいの!』と言ってるだけなのだから。
最終的に母は「好きにさせたらいい!」と折れた。
母には折れてもらわなければ困る。帰れなければ父は「もう誰も見舞いに来なくていい!」なんて言い出し、無気力になる。
私は甘いのか?
先走りすぎか?
まだ『死』を考えるべきでは無い?
でも後悔はしたくない。
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