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(愛……か)
思い出されるのは、きつくつり上がった黒い瞳。
ちょっと意地悪な片笑い。
お腹の子供を慈しむ、優しい笑顔。
溶けるほどに、甘い甘いキス。
その何もかもが、今は懐かしく、恋しい。
「分からない。
でも、多分、そうだと思う。
碧さんへの愛情とは違うけど……。
私は、ゼロさんを愛してた…………」
声に出してみてようやく、目を逸らし、ずっと封じてきた気持ちに名を与えられた。
彼の口からは一度も聞けなかった、聞こうとしなかった、その名を。
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