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「…………どっちか一つだけ、返してやるよ、碧。
花純を取るか、十二重鎖DNAの資料を取るか、今すぐ選べ」
私に代わって答えた低く唸るような声に、ざわりと心が波打った。
そんな選択を迫る意図が読めない。
けれど私をより一層強く抱き寄せる腕が、ゼロさんの本心を雄弁に語る。
例え碧さんが前者を選ぼうとも、私を手離すつもりはない、と。
私か、研究資料か。
我が子か、復讐の完遂か。
どちらかを手渡さなければ、逃げ道はない。
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