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オンボロ車のエンジンは悲鳴を上げながら長い長い山道を登った。
右を見ても左を見ても、いつまで経っても変わらぬ両脇の山景色は、僕を深い深い山の奥に引きずり込んでいくようで、次第に怖ささえ感じてきた。
アパートから車で二時間も掛かる距離は、頂点にあった苛立たしさを恐怖へと変え、そしてそれが現実へと結び付ける太い糸へと姿を変える。
ついこの前来たばかりの家が見えてきた。
僕は、この前同様に牛小屋の前に車を止めるつもりだったが、そこにはあの自慢の車が置かれていた。
僕は、邪魔になりそうかなとは思ったが、敷地の入り口付近に止めることにした。
この時、車だけ乗り換えてこのまま帰ろうかと、どんなに思ったことか・・・
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