第3章 新、新たな生活

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彼女の実家には週末の夜に行き、一泊して帰ってくるというスタイルになった。     この住宅からは一時間半を少しばかり超える道のりであったが、仕事から帰宅して着替えを詰めた後、好きな甘いものやサンドイッチを買って食べながらゆったりと進むこの時間は、何となく小旅行気分で、これを苦に思ったことは一度たりとも無いから不思議である。  ただ、ここに至るまでに最大の失言というか、暴言を吐いた事は事実として彼女の心の中には残っているだろう。   それは、結婚式直前のことであった。   衣装合わせに向かう車中で僕は、平然な顔でこう言った。  「結婚式はもう皆に案内状を出してるから、結婚して暫らくしたら別れよう」  勿論、彼女の答えはノ―であったが、だからと言って彼女は怒ったりしない。 普通なら大口論である。   僕は、決して起こらない彼女にあぐらをかいていたのである。   質が悪いのは、これが冗談ではなく本心だったこと。   つまり、自分の中ではこれは単なる成り行きで、愛情の結果とは思っていなかったからである。   返事一つで拒否された僕は、そのまま成り行きで結婚した。
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