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有り難いことに、アパートに転がり込むことを彼女は拒まなかった。
新しい生活の始まりである。
キッチンと風呂トイレが付いた2Kの部屋は、二人にとっては十分な広さで、若い二人は腕枕をして寝ることに幸せを感じ、ピンクのカ―テンが明るく楽しい暮らしに彩りをつけた。
間もなく、仕事を辞めた僕は失業保険の世話になることになった。大した金額も入らない僕に彼女は愚痴の一つも言わなかった。
相変わらず明るい笑顔のままで。
若く浅はかな考えの僕は、彼女の笑顔の中に秘めた気持ちなど想像もせず、当たり前のように威張っていた。
それはまるで召使いのように。
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