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「例え、嘘でもお芝居でも、貴方は私を心配してくれた!
励ましてくれた!
あの時の嘘もお芝居も、私にとっては遠い異国で初めて噛み締めた“真心”だった!!」
しばらく、誰も動かなかった。話さなかった。
そしてようやく、“通訳さん”が眼鏡の奥にいつもの穏やかな微笑みをたたえながら、口を開いた。
「ありがとう、若宮さん。
今の私を信じてくれて──
それなのに、今の私は貴女に何もしてあげられない。友人なのに……」
“通訳さん”は苦しげに口元を引き結ぶ。
由衣はそんな彼を見ながら、安心したようにこう言った。
「いいえ、1つだけあります」
「それは……?」
「私を“ルー・ガルー”の元へ連れて行って下さい」
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