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俺は信じていた。いや、簡単に言うと信じたかったのだ。この生活がいつまでも続けば良い、自分のしたことをそんな風にしか受け止めていなかった俺に天罰がくだったんだ。俺は雨がザーザーと降っている日にあいつに呼び出された。最初は何の真似かと思ったがあいつが刃物を持っているのが見えたのですぐさま分かった。あいつがナイフを持って俺に突進してきた。俺は横腹を刃物で思いっきり刺された。刺された部分から血が流れだす。俺は刺されたと言う事実よりも痛みが先に脳に焼き付けられる。ちょういてえ~…。自分の血が下に垂れている… 死ぬ前にやりたいことがかぞきれない程あるぜ・・・。しかし、刺した相手があいつだったなんて俺には受け止められない。いや、俺の脳がこんなのありえない、あるはずがないと、情報を拒絶する。あいつは逃げていった。刺してしまったあいつの顔が大変なことをしてしまったと言う顔をしている。俺はあいつに殺されても文句も言えないのにまだそんなことを言っていた。ただ、そうさせた自分が一番悔しい。あいつは逃げていく。涙が垂れて、逃げているのが見える。すると、もう一人がやってくる。お前か…。あいつに言っておいてくれないか?俺は殺されるなりの理由があったんだからと。死んじゃヤダ?いいだろ。俺は無力な人間さ。いつだってそうさ。こうなって死ねたのもいいじゃないか。お前だって俺が死ぬのを望んでいたんだろう。違う?何言ってるんだ。俺だって。死んでたまるかと思ってたとも。だがな、お前らのおかげだ。これで貸し借り無しだろ。俺は最後の力でそいつに笑顔を見せた。
だから、泣くな。お前が泣くと世界が泣いちまう…。
だから…な……く………な……………。
やばい、意識がどんどんなくなっていく。自分の中から出てきた血が止まらない。揺さぶる彼女のためにも、俺は死ぬべきなんだ…
俺はその場でぐったりとして息を引きとった…
俺はいつだって無力だった。どんなにもがいても、どんなに…。
もう上も下も分からない。
あれ?僕は一体誰なんだ?
もう自分のことも思い出せない。
本当に無力だ。
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