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ちらりとこっちを見た宮下さんと目が合って、
思わずにっこり笑ってしまったけど、
慌てて、握ったばかりの手を離した。
「片手運転はダメですよ。
ちゃんと両手でハンドルを握って、前を見て運転してください!」
一瞬の間があった後、宮下さんは楽しそうに声をあげて笑った。
「……さすが瑞希」
山道を通って、少し開けた駐車場で宮下さんは車をとめた。
あちこちに温泉宿の看板がでているから、ここは温泉街なんだと思う。
車を下りると、吐く息が白くなる。
雪が降ってもおかしくないくらいキーンと冷えた山の空気。
「温泉に入りたかったんですか?」
「温泉、ゆっくり入りたいね。
だけど、それはまた今度。
俺が行きたいのはこっち」
宮下さんは来たことがある場所なんだと思う。
私の手をとると、迷うことなく進んでいく。
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