23.未来への階段

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ふと目に入った岩のくぼみに水溜りができている。 「ね。将弥さん、あそこの岩のくぼみ、 もしかして、ハート型じゃないですか?」 それは、ぱっと見て分かるほど、 しっかりとしたハートの形が 岩の中にくっきりと浮き出ている。 「そうなんだ。 すごいベタだなとは思うんだけど……」 私のすぐ横に立った宮下さんの顔を見上げる。 なんだかいつもと違う堅い表情で、 宮下さんも私の瞳を覗きこんでいた。 宮下さんはこれ見せに わざわざここまで連れてきてくれたんだ。 「子供の頃、ここに来たときから思ってたんだ……。 俺もここでしようって」 「……何を?」 宮下さんは、ゆっくりとした動作で 上着のポケットから小さな四角い箱を取り出した。 箱を見ただけで、トクンと心臓が音を立てた。
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