第1章

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―松尾― 店から出ると向かいの本屋に入る。 暫くすると彼女が出てきた。 辺りをキョロキョロしてる。可愛いなぁ。 彼女が歩き出す姿が見えて慌てて店を出る。 結構歩くの早いな。 道路を挟んだ向こう側を歩く彼女。そのうち二人並んで歩けるようになったらいいなぁ。 暫く歩くと彼女がマンションの中に入って行った。 うちの目と鼻の先。そっか。ここに住んでるんだ。 それなら通勤の時間が分かれば一緒に会社に行くことも夢じゃないかもしれない。 そう思うと嬉しくてたまらない。彼女と並んで仕事に行けたらどんなに幸せだろう。 マンションの前を通り過ぎて家に向かう。 4階建てのアパートの2階。 「ただいま」 そう声をかけて中に入ると母親が出迎えてくれた。 「お帰り。牛乳買ってきてくれた?」 「ああ。これ。それから何か必要な物あったら俺が買ってくるから」 「そうかい?あ、ご飯すぐに食べる?」 「あーーー。風呂先に入ってくる」 「上がったらすぐに食べれるように準備しとくから」 そう言って台所に向かう母親。 父親は10年前他に女を作って出て行った。 足が少し不自由な母親を一人にする訳にもいかなかったし女と居る父親の所にいけるはずもない。 生活に困らないだけの収入はあったからうちが貧乏だと思った事もないし、不自由な思いもしてる訳じゃない。 ただ年々のしかかってくる年老いた母親の面倒。結婚するとなると同居になる。 彼女はそれを了承してくれるだろうか? でも優しい彼女の事だからきっと母親の事も喜んで引き受けてくれるに違いない。 風呂から上がり、飯を食って部屋に戻る。 DVDをセットする。 画面に出てる人はどこか彼女に似ていた。 彼女じゃない。彼女はこんなに汚れていない。こんな気持ちよさそうに男に跨ったりしない。 ああでも自分の手で彼女を汚したい願望はある。 彼女が淫らに乱れる姿が画面とリンクする。 ティッシュで後処理をして普通のテレビを点ける。 ゴミ箱に使用済のティッシュばかりが溜まっていく。 この思いが全部彼女に向けたもの。 これを知ったらの僕の思いを分かってくれるだろうか? 抜いたばかりだと言うのに彼女を思うだけで欲望が起き上がる。 自分が良いポイントに手を伸ばして擦ると直立する。 画面なんて見なくても目を閉じれば目の前に彼女を感じることが出来た。
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