くらがりの百足

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「充血鬼は元々『ユーラシア』大陸北部の森に潜んでた、俗に言う『森エルフ』の一人だった。先祖を辿れば俺やお前と同類だよ。俺と同じように人間の手で実験動物にされた、可哀想な奴だ。長い時間をかけてケーヒルが調べていたが、どうやら奴の種族は連行に抵抗したことで、本人を残して全滅させられたらしい。その関係でもはや原型を留めないまでに弄られたあいつは、俺の前に姿を現した時にはもう自分がなぜそこにいるのかすら分からないような状態だった」 「ケーヒルとはどう言う関係で?あいつは何なんだ?」 痣が問いかけ、男が応える。 「あいつは元々の人間で、どうやら『アメリカ』陸軍の特殊部隊出身らしい。俺や『充血鬼』と同じように体が生身ではないもんだから、国が滅んで長いことさ迷ってそのうち…なんと言うか、北米大陸に古代から伝わる精霊みたいなもんに出会って、そいつの気まぐれで力を授けられて、魔術師になったようだ。あいつは元々俺の仕事の対象人物で、けど今ものうのうと生き残ってるってやがるってことは…後は本人に聞け。そんなのはどうでもいい」 男は苦々し気に言い、続けた。 「お前も知っての通り、『充血鬼』の体はほとんど血液で構成されている。ケーヒル曰く体の中心に核があって、それが奴の生命を維持している。奴は俺とは違って純粋に身体能力を向上させる類いの手術と実験を受けていたようだが、奴が元々持ってたエルフの妖術で身体を解放してからも大量の血液を求めている理由はここにあるらしい。奴は施設を構成するパーツとして洗脳されていて、最初の戦闘はそら酷いもんだった…」 突然、男は話を止めた。
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