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龍一に糸ノコが渡った時点で、天井から電子音をたてて薄いモニターが降りてきた。
ふたりはそちらに目をむける。
プツンと電源が入って、
「キャハハハ! いい眺めね」
甲高い女の声がした。
モニターの電源は入っても映像は映らない。
音声だけで接触するつもりのようだ。
しかし、その無神経な笑い声に、龍一も高広も一気に気分を害して、むっつりと黙り込んだ。
何も情報を与えようとしないモニターにも興味を無くしてしまったらしく、
高広は壁際にペタンとしゃがみ、龍一は腕組みをして壁に寄りかかる。
そのまままるでふたりとも眠ってしまったかのように、無言。
するとモニターの向こうの女が慌てたように言った。
「ねえ、なんでこんなことをするとか、ここはどこなんだとか、聞かないの?」
高広だけがチラリと目をむけて、
「聞―て欲しいのか?」
ふてぶてしく尋ねた。
「あんたがお願いするんなら、聞いてやらんでもないぜ」
「なによその上から目線」
女は気に入らなそうだ。
しかし、
「別に。俺たちは声だけ若作りの三十路女と長話する趣味はないだけ」
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