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高広が言い放つと、モニターの向こうはシンと沈黙した。
「おい」
すると龍一がゆるゆると口を開く。
「この声の響きは、どう考えても35過ぎだ。女性の年齢を口にするなら、きっちりと当てろ」
「きっちり当てるのに、どんな意味があるんだよ」
高広はニヒヒと笑って、龍一の話題に乗っかる。
「――うるさいわねっ!」
モニターの向こうで、女がヒステリックな声をあげた。
「なんだよ。しゃべれったり黙れったり、ややこしいな」
「ややこしいのが女だろ」
「あいにく、ややこしい女と付き合う趣味はなかったもんでね」
女を無視して勝手に会話を繰り広げるふたりに、モニターはやがてプツンと音をさせて通信が切られた。
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