監禁

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だがしかし……。 龍一の方を見れば、まったく表情を変えることなく、こちらを見ている。 感情が読めない顔だ。 すると、 「心配するな。テクには自信がある」 龍一がシレッと言った。 とたんに、 ――ゾワリ―― 高広の全身に鳥肌がたつ。 「冗談だ」 また龍一が言う。 「あー、あんたの冗談は笑えねーんだよ!」 そういえば龍一の弟の皆人がいつも愚痴っていた。 龍一の冗談だけは、あまりにもいただけない、と。 しかし、高広は思考を巡らせる。 せっかく女が再び通信を繋いできたのだ。 何か接触に繋げる手はないだろうか。 ――そうか! 高広は思いついて、着ていたシャツの前ボタンを外しだした。 すると龍一も何かに気付いたように、 「俺に任せろ」 そう言って、手に持った糸ノコで、高広のシャツの手錠に繋がれた方の袖を、もどかしげに切り裂き始める。 「キャーッ!」 モニターの向こうで女が嬌声をあげた。 何を期待されているのかを悟って、高広と龍一のこめかみがピクリと反応する。 しかし構わず、ふたりは乱暴に高広のシャツを剥ぎ取った。 高広は半裸になる。 そのシャツを、 「ホイ」 龍一に渡した。 龍一は受け取って、糸ノコギリに二回ほど巻きつける。 それから、大きく振りかぶって、シャツを投げた。
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