監禁

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その男は、中のふたりとは絶対に接触を持たないように、言い聞かせられていた。 部屋の鍵を開けて中に入り、カメラを邪魔している遮蔽物を取り除くだけ。 子どもの使いのような仕事だ。 これで報酬が20万。 部屋の中の危険人物は、ちゃんと鎖でつながれているはずだし、何を喚くか知らないが、耳を貸さなければいいだけの話だ。 心の中で耳栓をして、男はドアを開けた。 「――!」 目に飛び込んできたのは、ベッドシーンだ。 茶髪の男に金髪の女が組み敷かれている。 いや、よく見れば、金髪の方も男だ。 肌は透けるように白いが、シャツを着ていない胸がない。 「ゲッ」 男に同性愛の趣味はない。 趣味はないが、茶髪の男が、乱れた金髪を指に絡ませながら、こっちを向いた。 その眼差しに、妙な色気がある。 吸い込まれるような、抗えない魅力。 茶髪の男は、魅惑の微笑みを浮かべて、 「こっちに来て混ざるか?」 と聞いた。 金髪の方も男の方を振り向いた。 その紫色の瞳が誘うように濡れている。 白い肌が妖しくひらめいて、 「ああ、来いよ」 手を伸ばしてきた。 白い白い、吸い込まれるような肌だ。 男は、一瞬にして堕ちた。 同性愛の趣味はないと思っていたが、勘違いだったようだ。 いや、このふたりは『同性』という人種でくくれる相手じゃない。 『美』と『愛』の神だ。 神に逆らえる人間などいるはずもない。 『俺は、抱きたいのか抱かれたいのか……』 男は思いながら、ふらふらと前に出る。 あの金髪の男を乱暴に犯し、喘ぎ声をあげさせるのもゾクゾクするし、茶髪の男に組み敷かれる自分を想像しても蠱惑な誘いに背筋が震える。 ふたりが発しているのは、魔力とも思える魅力。
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