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その瞬間、
「捕ーかまえたっ!」
金髪が叫んで、勢いよく跳ね起きた。
男に掴みかかる。
男は一瞬にして我に返り、逃げようとしたが、
「詰めが甘い」
もうひとり、茶髪の男に足を引っ掛けられて転がされた。
うつぶせにされ、腕を背中に捻り上げられる。
「うっせーな。俺は頭脳労働者だって言ってるだろ。だいたいなんで俺が下なんだよ」
「お前に組み敷かれるなんて、想像するだけで虫唾が走る」
「そんなもん、俺だって一緒だろーがよ!」
ギャーギャーと言い合っているふたりの隙をついて、男はこっそり逃げ出そうとした。
が、
「痛デデデデ」
茶髪に捻り上げられた腕に、強い力が加わる。
「ほれみろ、凶暴人間はまともに敵も取り押さえられねーじゃねーか」
「ああ、相手がお前だと想像したら、つい」
「あー? 俺のこの優秀な頭脳を破壊するつもりかい、この筋肉バカ」
「心外だ。バカは取り消せ」
男は頭が痛くなった。
ついさっきの自分は、このふたりのどこに『神』を見たのだろう。
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