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高広は首筋の鈍い痛みに目が覚めた。
「っ痛ぇー」
顔をしかめて、痛む首に手をやろうと身じろぎするが、どうやら痛むのは首だけじゃないらしい。
腰も背中も、冷たいコンクリートに長い間寝かされていたようで、ギシリと軋む。
「ったく、何なんだよ」
口癖の憎まれ口を叩いて腕をあげれば、
ジャラリ
と重い。
重い瞼を無理やり開いて視線を回せば、右の手首から鎖が伸びていた。
「は?」
手首にはブレスレットと言うには無粋な金属の輪っかが巻きついている。
そこから伸びた鎖の先が、壁に沿って立つ、直径5センチほどの太い金属パイプの向こうに伸びていた。
手錠。
高広が繋がれた片方の手錠の先には、当然、もう片一方の輪っかがあるわけで、そこにはぐったりとした、高広のものではない左の手首。
その男は、薄茶の前髪を深く顔にかけて、目を閉じている。
壁を枕のようにして頭を引っ掛け、四肢を地面に投げ出していた。
高広につながれた左腕が、鎖にぶら下がるように肘を曲げて上を向いている。
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