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高広の提案を受け入れて、龍一は数歩下がる。
箱から落としたために、龍一より2センチ背が低い高広でも、足を伸ばせば、ノコギリに届いた。
手元に引き寄せる。
手に持って見れば、なるほど木柄についている15センチほどのカーボン製の刃は、指で押しただけでグニャリと曲がる。
しゃにむに鎖や鉄パイプに刃をたてれば、簡単に折れてしまうだろう。
「ここで切れるのは人体だけ」
そう言ったのは、鎖に繋がれた手でパイプを掴み、壁に寄りかかっている龍一。
その見解は正しそうだ。
高広はノコギリを持って戻り、龍一に差し出した。
「か弱い方が武器を持つんじゃなかったのか?」
怪訝に言う龍一に、高広は、
「訂正するわ。俺は頭脳労働派なの。肉体労働は任せる」
ニッと笑って答えた。
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