ガラスの向こうのカノジョ

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 ある日、僕は一目惚れした。  と、言っても、カノジョと話した事はない。  僕は、ガラス越しにカノジョの姿を見ているだけだ。  向こうは僕に気付いていない。  最初はそれで満足だった。  カノジョのクリッとした黒い目、小さく細い手。かわいらしい小ぶりな鼻。そして、愛嬌のある頬っぺた。  少し出っ歯ではあるが、そこもチャーミングポイントなのだ。  その姿を見ているだけで満足だった。  最近は違う。  もっとカノジョの事を知りたい。  カノジョが何を考えているのか知りたい。  僕の事をそのつぶらな瞳で見て欲しい。  だが、カノジョはそんな僕の願望などお構いなしに食事に夢中だ。    いつもそうだ。  カノジョは人前だろうが関係なくモリモリと食事を行う。そこも魅力の一つだ。  カノジョと一緒に暮らす方法ある。  あるのだが、その方法を使ってよいのか?  僕には抵抗感があった。  あぁ、せめてカノジョの声を聞きたい……僕は頭がオカシイのだろうか?  今もカノジョは黙々と食事を続けている。  僕はさらにガラスに顔を寄せた。  ……ここにいる、僕はここにいるよ! こっちを見てくれ!  すると、僕の想いが通じたのか、カノジョは驚いたように顔を上げた。  そして、声が聞こえた。 「――あの、お客様、申し訳ございません。そんなに顔を寄せられると、ハムスターが怖がってしまいます」
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